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水戸地方裁判所 昭和28年(行)15号 判決 1957年4月30日

原告 石井喜三

被告 日立戦災復興土地区画整理施行者日立市長

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一、当事者の申立

原告訴訟代理人は「被告が原告に対し昭和二十七年八月六日附日建発第八三八号の通知を以て行つたとする別紙第一目録記載の土地に対する原告を所有者としての換地予定地指定処分並びに同日附同号の通知を以て行つたとする別紙第二目録記載の土地に対する原告を賃借権者としての換地予定地指定処分はいずれも無効であることを確認する。訴訟費用は被告の負担とする」旨の判決を求めた。

被告訴訟代理人は主文第一項同旨の判決を求めた。

第二、当事者の主張

一、原告の請求原因

(一)  被告は特別都市計画法による土地区画整理施行者であるが昭和二十七年八月六日その施行区域内にある原告所有の別紙第一目録記載の土地及び原告が訴外北見隆介から賃借している別紙第二目録記載の土地について、同日附日建発第八三八号をもつて「換地予定地の指定について」と題する書面を原告に通知し、原告はその頃右通知書を受領した。而して被告は右書面(土地所有者としての分)添附の図面(別紙第一図面参照)中9 10 11 12 31 29 9の各点を順次連結した直線で囲まれる部分に該当する地域が別紙第一目録の二、一四九番の一の換地予定地として指定されたもの、右図面中2 3 19 20 18 2の各点を順次連結した直線で囲まれる部分に該当する地域が第一目録の二、一四六番の一、四、二、一四七番の三の換地予定地として指定されたもの、右書面(借地権者としての分)添附の図面(別紙第二図面参照)中13 14 15 31 13の各点を順次連結した直線で囲まれる部分に該当する地域が第二目録記載の原告の借地百坪に対する換地予定地として指定されたものであると称しているのである。

(二)  しかしながら、被告のいう右換地予定地の指定処分は、左の事由により無効である。

(1) 前記通知は特別都市計画法にいうところの換地予定地の指定ではなく、その前段階たる換地予定地の位置の決定についての通知に過ぎないものである。

即ち、土地区画整理施行のため換地予定地の指定をするには、整理施行者は換地予定地につき正確な測量を経た後でなければこれをなし得ないものであるから、最初樹てた換地計画を最後まで維持すると後に計画の全部若くは一部の変更を余儀なくされるというような場合も多々生ずるため不都合な結果を招来し、他面換地予定地の大体の位置をできるだけ早く従前の土地の所有者、賃借権者等に知らせ建築その他に不便なからしめる必要等からして、整理施行者は法律に基く換地予定地の指定通知以前の経過的措置として、換地予定地の位置を決定しこれを従前の土地所有者、賃借権者等に通知する方法がとられているのである。これを法律に基く「換地予定地の指定通知」と区別して、仮にここで「換地予定地の位置決定の通知」と称するならば、前記日建発第八三八号の通知はまさにその換地予定地の位置決定の通知であるというべきである。

このことは左の諸事情からみても明かである。

(イ) 被告は昭和二十三年初頭、本件区画整理計画の原案を樹立し、同年二月二十八日日立復興土地区画整理委員会にこれを議案第二号「日立復興土地区画整理地区第一工区の一部仮換地位置の修正及び借地権仮換地位置指定の件」として諮問した上同年四月十九日原告に対する換地予定地の位置を決定したが、その後右決定された換地予定地の位置を変更する計画を樹て、再び昭和二十六年六月十三日前記委員会に諮問し、同委員会において議案第十七号(追加)「日立復興土地区画整理地区第一工区内一部換地予定地位置変更の件」として審議答申を経て前同様換地予定地の位置を決定し、これに基き前記通知を原告に送付したものであつて、この経過の点からみても右通知は換地予定地の位置決定の通知に他ならないものというべきである。

(ロ) 土地区画整理の施行に当り、換地予定地の指定をするには、その前の経過的措置として換地予定地の位置を決定して通知するのが行政上の慣習であつて、茨城県下における水戸市外数都市の土地区画整理の施行についても例外なく換地予定地の指定通知前に、右行政上の慣習である換地予定地の位置決定の通知という措置を講じており、被告も茨城県における土地区画整理施行者として右の如き行政上の慣習に依拠し、原告に対する前記通知もまさにそれに従つた換地予定地の位置決定の通知であつたといわねばならない。

(ハ) 前記通知が、もし換地予定地の指定であるとするなら右指定通知書にその根拠条文として「特別都市計画法第十三条」と明記される筈なのに、実際には「都市計画法第十三条」と記載されているに過ぎないところよりすれば、被告はこれによつて換地予定地の指定を通知したものではなく、換地予定地の位置決定の通知をしたに過ぎなかつたことが看取されるのである。

(ニ) 被告が前記委員会に諮問した前記議案及び被告が原告に送付した日建発第八三八号通知書には、換地予定地の位置を示す図面が添附されているが、その地積については何等の記載もない。このことをみても前同様のことがいえるのである。

以上の事実に徴し明かなように、前叙昭和二十七年八月六日附で被告の発した日建発第八三八号通知書は換地予定地の指定そのものではなく、その前段階においてなすところの換地予定地の位置決定の通知であるから、これによつて換地予定地の指定の効力は発生せず、従つてその意味において換地予定地の指定処分としては無効のものといわねばならない。

(2) 仮に前記通知が換地予定地の位置決定でなく換地予定地の指定であるとしても、特別都市計画法第十四条によると、同法第十三条による指定通知を受けた者はその日の翌日から換地予定地の全部又は一部について使用収益をなし得るに至るのであり、その反面従前の土地についてはその使用収益権能を失うものであるから、右指定通知書には換地予定地の地積を厳密に表示しなければならない。そうでないと換地予定地の範囲が不明確で行政処分としてはその内容を特定できないのである。被告の送付した前記指定通知書には、換地予定地の地積の記載を欠きその地域が確定できないから、それは内容不明確な行政処分として無効といわねばならない。

二、被告の答弁

原告主張の事実中、

(一)の事実は認める。

無効原因の(1)の点はこれを争う。即ち、

(イ)の点について、本件換地予定地の指定に至るまでの経緯についての事実は認めるが、日立復興土地区画整理委員会に諮問した議案及び被告において決定した計画は何れも換地予定地の指定に関するものであつて、これを原告主張のようにその前段階たる換地予定地の位置の決定とみるのは謬見たるを免れない。

(ロ)の点について、原告主張の如き行政上の慣習が存することは否認する。仮に右のような慣習が存するにしても、被告はさような慣習に依拠する意思は全然有しなかつたものである。

(ハ)の点について、本件区画整理は最初から特別都市計画法に基く換地計画であつて、被告の送付した通知書に「都市計画法第十三条」と記載されているのは「特別都市計画法第十三条」の誤記であり、その後被告は右誤記を発見したので昭和二十八年一月十二日原告に訂正通知書を送付したが、同人の受領拒否により、所定手続に基きこれを公告した。

(ニ)の点について、換地予定地の指定通知に地積の表示を欠いていたことは認めるが、後述のように指定された地域、その境界線を知り得る方法を講じておいたのであるから、この点を捉えて云々するのは失当である。

無効原因(2)の点も争う。

換地予定地の指定通知書に原告主張のように換地予定地の地積の記載はなされていなかつたけれども、当時被告は換地予定地の境界に番号を附した杭を打つてその範囲を明確ならしめておき、他方右通知書にその現地と照合するよう作成し且杭番号を記入した図面を添付し、以て同図面上の境界線が現地のどこに該当するかを容易に諒解し得るような方法を講じておいた。それのみならず右通知書には、昭和二十七年八月八日現地立会の上換地予定地を実地について指示説明する旨附記しておいたに拘わらず、原告は右日時に現場に出頭しながら故意に被告側係員の指示に立ち会わなかつたものである。なお又被告としては、昭和二十七年八月二十七日日建発第九四四号をもつて特別都市計画法第十四条第三項に基く換地予定地の使用開始日を通知した際、その書面に原告に対する換地予定地の地積を記載しているのである。従つて換地予定地の範囲は明確であり行政処分として内容不特定とはいえないのである。

仮に地積の記載を欠くの故に換地予定地の指定として不適法であるとしても、被告は昭和二十八年一月十二日附日建発第一三号通知書をもつて、右地積を記載した訂正通知を原告に送付したところ受領を拒否されたので、被告は特別都市計画法施行規則第十七条によつて準用される耕地整理法第三十五条の規定により右通知書を公告したから、これによつて当時右書面が原告に送達されたと同じ効果を生じ、その時完全なる換地予定地の指定処分としての効力が生じたものというべく、従つて原告において日建発第八三八号の通知書による行政処分の無効の確認を求める利益を有しないわけであり、いずれにせよ原告の主張は失当たるを免れない。

三、被告の答弁に対する原告の主張

被告が昭和二十八年一月十二日附日建発第一三号をもつて、原告に対する換地予定地の地積を記載した書面を送付したこと、原告においてこれが受領を拒否したこと、そこで被告が右書面を公告したことはいずれも否認する。仮に右のような事実があつたとしても、日建発第八三八号の通知が換地予定地の位置決定の通知である以上、右の如き手続によつて換地予定地の位置決定が訂正によつて特定されたに止まり、換地予定地の指定処分の無効が有効となるいわれはなく、又右訂正通知自体何等新たな換地処分でないのであるから依然として換地予定地の指定処分としては無効といわねばならない。

第三、(証拠方法省略)

理由

被告が特別都市計画法に基く土地区画整理施行者であつて、昭和二十七年八月六日原告所有の別紙第一目録記載の土地並びに原告が訴外北見隆介から賃借する別紙第二目録記載の土地について、同日附日建発第八三八号をもつて、「換地予定地の指定について」と題する通知書を発し原告はその頃右通知書を受領したことは当事者間に争がない。

そこで以下原告主張の無効原因について順次判断することとする。

一、無効原因(1)について

被告は前記通知をもつて特別都市計画法第十三条に定めるところの換地予定地の指定である旨主張するのに対し、原告は右は換地予定地の指定ではなく、その前の経過的措置としてなされる換地予定地の位置決定の通知であつた旨主張するので、被告の送付した前記昭和二十七年八月六日附日建発第八三八号通知書の性質について考えてみる。

被告が昭和二十三年初頭原告所有賃借にかかる本件各土地を含む地域について区画整理の計画を樹立して同年二月二十八日日立復興土地区画整理委員会に諮問し、その結果に基き同年四月十九日原告に対する換地予定地についての決定をしたが、その後その計画を変更する旨の計画を樹立し、昭和二十六年六月十三日前記委員会の再諮問を経た上前同様換地予定地についての決定をなし、(尤も右二回に亘る諮問及び決定の内容が、原告の言うところの換地予定地の位置決定であつたか否かの点は除く、この点は後述)これに基き被告は前記通知書を原告に送付したものであることは本件当事者間に争がなく、この事実に成立に争のない甲第一乃至第四号証・乙第四、第五号証・第七、第八号証・第十乃至第十四号証・第十六乃至第十八号証・第二十号証の一、二・第二十一号証証人鶴岡仙之助の証言並びに弁論の全趣旨を綜合すると、被告は昭和二十三年初頭原告の所有賃借にかかる本件各土地を含めた日立市第一工区地域について、特別都市計画法に基く土地区画整理の計画原案を樹立し、同年二月二十八日日立復興土地区画整理委員会の諮問を経た上、同年四月十九日一旦原告に対する換地予定地を決定し、同月二十二日附日都発第一一二号通知書をもつて、原告に対する換地予定地の指定をする手筈になつていたところ、その頃被告は日立市における道路第二一一号路線(新道)の幅員を縮少し従前の右区画整理計画を変更する必要に迫られたため、原告その他右新道の沿線に所有地又は賃借地を有する者等に対する右換地予定地の範囲を修正することとなり、それがため、前記日都発第一一二号による指定通知書の送付を保留していたこと、その後、被告は原告その他の者に対する前記換地予定地に関する計画を変更すべく、新たな土地区画整理計画を立案し、昭和二十六年六月十三日これを再度右委員会に諮問して同月二十四日原告に対する本件換地予定地を他の者に対する分と同時に決定したがこれが指定通知をなすに当り、前叙のような事情から日都発第一一二号による通知書の発送が保留されていたことを当該事務担当係員において失念し、右通知書は既に当時原告に送付され、原告に対する頭初の換地予定地指定処分がなされていたものと誤解していたので右処分を変更する趣旨のもとに昭和二十七年八月六日附日建発第八三八号通知をもつて、先になした指定処分は、道路第二一一号路線の幅員を縮少するため変更する旨記載し同時に新たな換地予定地を添附図面表示のとおり指定する旨の通知書を原告に送付したものであること、しかしながら更にその後に至り、前記担当係員は昭和二十四年四月二十二日附日都発第一一二号通知書が原告に送付されていたかどうかについて疑問を抱くようになり、当時の書類発送簿等を仔細に調査した結果、右書面は送付されていない事実が判明したので、被告は原告に対し昭和二十八年四月十五日附書面をもつて「前記日建発第八三八号通知は、日都発第一一二号による換地予定地の指定を変更したものではなく、特別都市計画法第十三条による換地予定地の指定であるから訂正の上念のため通知する」旨記載した書面を送付したこと、以上の各事実を認めることができる。

以上認定事実によれば、被告は昭和二十七年八月六日附日建発第八三八号通知書の送付によつて昭和二十四年四月二十二日附日都発第一一二号通知書による換地予定地の指定処分を将来に向つて取り消すと同時に、新たに前記第八三八号通知書添附図面表示の地域を別紙目録記載の土地(第一目録の土地については所有権、第二目録の土地については賃借権)に対する換地予定地として指定する処分をしたものとみるべきである。そして前記認定のような経緯により先になされた換地予定地の指定処分を(それが事実なされてあつたとすれば)将来に向つて取り消すこと自体はその処分の相手方たる原告に少しも不利益を与えるものでなく、その他右取消の効力を妨ぐべき理由は本来存しないわけなのであるが、事実は前記の如く被告は昭和二十四年四月二十二日附日都発第一一二号による原告に対する換地予定地の指定処分をなした事実はないのであるから、日建発第八三八号による通知中先になした換地予定地の指定処分を取り消す趣旨の部分は存在しない処分を取り消すこととなり、それ自体無意味な行為として無効のものといわねばならない。これに反し新たな換地予定地の指定をなした処分の部分については、他に違法な点の存しない限りこれを無効とすべきいわれはないのである。従つてその後昭和二十八年四月十五日附で被告から原告に送付された訂正通知書は唯その趣旨を注意的に通知したに過ぎない、いわばなくもがなの措置であつたとみるべきもので、これによつて前記処分の効力に何等の消長あるものではない。

ところで原告は右日建発第八三八号による通知をもつて、換地予定地の位置決定の通知に過ぎない旨主張するけれども、その採用すべからざることは次に説明する通りである。

(イ)  原告は被告が日建発第八三八号通知書を原告に送付するに至つた経緯に徴しても右通知は換地予定地の位置決定の通知である旨主張するが、右日建発第八三八号通知書送付に至るまでの経過事実については前認定のとおりであり、なお前記乙第五、第七、第八、第十四、第十六、第十七号証を綜合すると、被告が日立復興土地区画整理委員会に諮問した議案及び同委員会の議事録には「換地予定地の位置指定の件」とか「換地予定地の位置変更の件」などという字句の記載を散見できるのであるが、右議事録等の全体の記載の趣旨を綜合し仔細に検討すれば、結局特別都市計画法第十三条の規定による換地予定地の指定若しくはその変更について諮問をし、審議したものであることは容易に諒知し得るのであつて、この点に関する原告の主張は採用することができないのである。

(ロ)  次ぎに換地予定地の指定をするには、行政庁はその前の経過的措置として換地予定地の位置決定の通知をするのが行政上の慣習であつて、被告もその慣習に依る意思のもとに右日建発第八三八号通知書を送付したものである旨主張するけれども、このような慣習の存在を認めるに足る証拠はない。そして成立に争のない乙第二十二号証・第二十三号証の一、二によれば、被告は前記日建発第八三八号による換地予定地の指定前である昭和二十六年八月二十五日附をもつて本件各土地を含めた前記日立市第一工区地域内の一部新道沿線の土地に対する換地予定地の位置を同月二十七日から翌九月二日まで縦覧に供する旨公告し、且つ同日附日建発第七〇六号通知書をもつて原告その他関係人にこれを通知していることが認められるから、これによつて原告は換地予定地の位置を予め知る機会が与えられていたものであるというべく、いずれにせよ原告の前記主張はその前提において失当といわねばならない。

(ハ)  次ぎに原告は、前記日建発第八三八号による通知が換地予定地の指定であるならば、その通知書に根拠条文として「特別都市計画法第十三条」に基くことを明記すべきであるのに、実際は「都市計画法第十三条」と記載されているのは、右通知が換地予定地の位置決定の通知であることの証左である旨主張し、右第八三八号通知書に原告主張の如く記載されていることは被告も認めるところである。しかしながら、成立に争のない乙第一号証の一、二及び前記鶴岡証人の供述を併せ考えると、被告が日建発第八三八号通知書に都市計画法第十三条と記載したのは、特別都市計画法第十三条とすべきところ謄写の誤りから「特別」なる文字を脱落したための誤記と認められるのであるから、右の点を捉えて原告主張の如く換地予定地の位置決定の通知であつたと結論ずけることの不当なことは明らかである。

(ニ)  更に原告は、被告が前記委員会に諮問した換地に関する議案及び原告に送付した換地予定地の指定についての通知書には、換地予定地の地積が表示されていないと主張するが、この点については後記無効原因(2)の箇所で述べるような理由からして、換地予定地の指定として欠くるところはない次第であり、いわんや右地積の記載がないからといつてそのために前記通知が換地予定地の位置決定の通知であるということにならないのは明白である。

以上の次第で本件処分が換地予定地の指定でなく換地予定地の位置決定の通知である旨の原告の主張は採用することができないのである。

二、無効原因(2)について、

原告は前記昭和二十七年八月六日附日建発第八三八号による通知書に換地予定地の地積の表示を欠くから、その地域が確定せず従つて内容不明確な行政処分として無効である旨主張し、右通知書に換地予定地の地積の記載のないことは被告も認めるところである。しかしながら、前記甲第一、第三号証・成立に争のない乙第三十五号証の一、二・証人鶴岡仙之助、同石田恵四郎の各証言を併せ考えると、被告は前記通知書を原告に送付する前に、日立復興地区画整理委員会の原告関係土地に対する換地予定地の認定図に基き、換地予定地の周囲に番号を付した杭を打ち(尤も建物が存したりコンクリートのある部分には杭が打てないため補助杭を用いたり穴をあけて杭に代えた)その地域を明確にした外、右換地予定地の指定通知書には換地予定地に照合して作成された地図に現地の杭番号と一致する番号を記載した図面を添付したこと、のみならず右通知書には、その発送二日後の昭和二十七年八月八日に被告側係員において換地予定地の現場で、立会の上その位置を指示説明する旨附記しておいたのであるが、当日原告は現地に出頭したに拘らず言を構えて被告側係員の指示立会に応じなかつたことが認められる。

してみれば原告としては、前記通知書添付の図面と番号記入の杭を打つこと等によりその境界を明かにした現地を一見すれば、容易に換地予定地の地域を知り得る状態にあり、又なおそれでも疑義ある場合は、被告側係員の立会指示に応じて現地の説明を受け得たに拘らず自から敢えてその挙に出なかつたものである以上、右通知書に換地予定地の地積の記載が欠けていたというただそれだけの理由で、右換地予定地の指定処分を内容不明確な行政処分として無効ということはできないのである。

以上説示の次第で原告の本訴請求は其の理由がないから之を棄却することとし、訴訟費用につき民事訴訟法第八十九条・第九十五条を適用して主文の通り判決する。

(裁判官 多田貞治 広瀬友信 中野武男)

(別紙目録省略)

第一図面<省略>

第二図面<省略>

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